前女将が約50年前に生み出した宴会用皿鉢料理でない「ひとり皿鉢」
こんにちは、安住庵・支配人の渡邊です。
「皿鉢料理って、宴会用の大皿料理でしょ」って、よく耳にすることがあります。
皿鉢(さわち)料理は高知県の郷土料理の総称で、大人数の冠婚葬祭には欠かせない宴会スタイルです。
お刺身やカツオのたたき、巻き寿司からフルーツまでとにかく何でも大皿に盛ってしまうという、語弊があるかもしれませんがやや大雑把な形式で、みんなでこれを取り分けて食べるのが一般的です(言うなればバイキング形式?)。
酒呑みの高知気質が如実に表れているもので、女性も給仕はそこそこに早く宴会に混じって酒を飲みたいということから、このようなスタイルになったと言われています。
当庵の前女将が高知の皿鉢まつりに行った時、「高知ならではのお料理のスタイルを何とか観光の個人のお客様にお出しできないものか」と考えたそうです。
そもそも通常の皿鉢(大皿そのものをこう呼びます)は直径40cmもある大きなもので、カツオのたたきなどを盛った場合ゆうに5~6人前はあります。
お1人様用には大きすぎるので、それでは特注の皿鉢を作ってしまおうという事になりました。
中身は高知の中でも地域によりまちまちですが、この辺りは四万十の幸、黒潮の幸が豊富に仕入れできますので、豪快だけでなく見た目も鮮やかなオリジナルの「ひとり皿鉢」を生み出せたという事です。
前女将いわく高知県内では初めての事でした。
宴会皿鉢では遠慮のかたまりなのか、最後の一切れを取りたくないのか、全部を食べきることがないようです。
ですがこのひとり皿鉢の場合ですと、小グループのご旅行でもそれぞれがご自分のペースで、他の方に気兼ねなくお召し上がりいただくことができるようになりました。
今から50年近く前のことですが、有田焼のこの皿鉢は今でも使用しています。
当時とは中身も少しずつ変わってきていますが、伝統を受け継いだこのお夕食プランは2名様用「めおと皿鉢」と共に当庵一番人気となっています。
コロナ禍でここ2年半もの間宴会はほとんどできなくなり、この皿鉢のスタイルも敬遠されがちになっています。
高知の文化が衰退しかねない由々しき事態ですが、「ひとり皿鉢」ならそんな心配もご無用。
安心してお楽しみいただけることでしょう。
老若男女ペロリとイケます。
一番上の画像 出典:農林水産省Webサイト